手挽き石臼を使い手で蕎麦粉を挽く理由は心を込められるから…蕎麦処けんち

この記事は蕎麦鑑定士のレポートとして書いた内容です。

【食味体験の感想、お薦めしたい部分】

石臼手挽きで打つお蕎麦屋さんが2015年春オープンしました。蕎麦処けんちです。福井県奥越(大野勝山)産の玄そばを取り寄せ、ご主人みずから手挽きで石臼を回しそば粉にして、そのそば粉で手打ちした蕎麦です。

蕎麦処けんち蕎麦は二八です。麺の太さは普通くらいで、長さは少し短めかもしれません。蕎麦の香りもよく、食感もツルッとしコシもほどよくあり、いい蕎麦です。蕎麦が持っている本来の旨味が十分に引き出されており、出汁をつけずに最後まで食べきれるほどのクオリティを持った蕎麦でした。遠田は鰹が苦手なので、出汁不要と伝えたら代わりに塩を出してくれました。いい塩でしたが、塩はほとんど使わずいただきました。

蕎麦処けんちのざるそば大盛り

蕎麦処けんちのざるそば大盛り

蕎麦処けんちのメニューはシンプルで基本ざるそばのみ。ざるそば750円、大盛りにすると900円。今回いただいたいのは大盛りです。

大人の隠れ家的な手打ち蕎麦屋

蕎麦処けんちは2015年春に自宅を改装してオープンしました。もともと加賀友禅の蒔絵を描く職人だったようですが、一大決心をして蕎麦屋としてスタートしたとのこと。民家改造の蕎麦屋はあちこちに増えていますが、蕎麦処けんちは室礼の質がとても高く品があります。

蕎麦処けんちの室内

蕎麦処けんちの室内

床の間には加賀友禅の美しいきものが掛けられていますし、所々に芸術的なオブジェが飾られていますが、どれもご主人がかかわったものなのでしょう。

けんちの部屋

けんちの部屋

お店に入った時間がお昼を少し過ぎたあたりだったので食べ終わるころは店内の客は自分だけでした。ご主人と奥様がいろいろとお話しを聞かせてくれました。もともと職人だったというご主人は口数少なめで職人気質の様子。奥様は明るい笑顔での接客は初々しさとあたたかな親切さを感じました。おふたりとも実直な人柄で仲の良いご夫婦のようです。こんな感じで夫婦で蕎麦屋を運営するというのもいいものですね。

なお、蕎麦を石臼で手挽きする理由についてご主人は「手をかけたものほど心が込められておいしくなる」と語られました。技術的には、電動石臼の一定回転のそば粉より、回転ムラがでる手動の石臼のほうがそば粉の粒子に適度なばらつきがでることで、ぷりぷり感がでるそばになるということがいえます。しかし、ご主人はそのような理屈よりも「手間をかけてでもおいしいものをお客様に食べてほしいから」という心情的なものが理由だといいます。すてきな理念ですね。

蕎麦処けんち ご主人と奥様

蕎麦処けんち ご主人と奥様

蕎麦処けんちは、蕎麦よし、人よし、居心地よし、と三拍子そろった大人の隠れ家的な手打ち蕎麦屋さんです。難点なのは場所がわかりにくいこと。

蕎麦処けんちの玄関

蕎麦処けんちの玄関

大通りから一本二本と入った小路沿いの民家を改装した蕎麦屋さんなので場所がわかりにくいです。玄関もわかりにくく、店の裏側の看板のほうが目立つくらいでした。初めて来店という方は事前にGoogleマップなどで確認したほうがいいかもしれません。(2015年11月現在のGoogleマップでは、けんちの店は店舗の裏側が表示されていますのでご注意を)

蕎麦処けんちのGoogle Maps

蕎麦処けんち
石川県金沢市袋畠町北112 〒920-0361
076-266-1688
営業時間11:30~14:30
定休日は火曜日と水曜日
駐車場は店の前と後ろに6台程度
※少し離れたところに大型車10台でも可能な大駐車場あり

※この記事は蕎麦鑑定士の試験として年間4件以上のレポートを義務付けられておりそのひとつです。なお、蕎麦WEBのほうにはレポート提出と同じ内容を当サイトにも掲載することを許可を得ています。